『日が射した気がして、「見た事も無い未明」見てるのさ。』
…はいはい。さあ、もうそろそろカウントをとりたいと思います。
バンドを始めて、六年余り、僕は一体何回のカウントをとっただろうか。
思えば、殆ど全ての曲の始まりはカウントからだった。
そういえば、僕のカウントが印象的だったと言ってくれた人もいたね。
人生はライブだ。
ライブが人生とするならば、今まではまだ、個人練。
そしてその後に仲間とスタジオに入った所だ。
さしずめ、深夜パックって所かな。
ずっと夜通しダンスしてたもんな。
僕らはスタジオで、全力で音を鳴らしていた。
汗をかいて、笑って。
楽器を持つ人も、持たなかった人も。
それぞれの音をもっていた。
必死で練習した。
大人になる事から逃げる為に始めた筈の音楽に、何時の間にか僕らは育てられて大人になっていたんだ。
練習は済んだ。
僕らは今から、それぞれのステージに立つ。
ライブハウスは違うけど、みんな同じ日にライブをしているんだ。
エフェクターを繋ぎ、ジャックをアンプに差し込み、チューニングを終えた。
マイクのスイッチを入れた。
ドラムのセッティングを終えた。
最高の仲間とステージに立った。
学生生活の想い出という、最高のSEが流れた。
僕らは今、ステージに立った。
何処にいても、何をしていても、どんなに離れていても、時間が経っても、
「あいつ相変わらず、あんな所であんな音鳴らしてるよ。」
と、笑って、けなして、誇りたい。
「アイツまだリズム跳ねてやがるぜ」
「相変わらずフックの効いたベースを弾くねえ。」
「うわ、あいつまた変態的なギターソロ弾いてる!」
てな具合にね。
それぞれの人生の音を聴きたい。
「掻き鳴らすコード」を
「粋なゴーストノート」を
「直線的なビート」を
「胸に響く美しいリフ」を
「心躍るカッティング」を
「目の醒めるようなリムショット」を
「感傷的な歌」を
「攻撃的な歌詞」を
「斜に構えた立ち位置」を
「染み入るようなメロディー」を
「浮遊するディレイ」を
「疾走する感覚」を
「腰に来るようセットされたキーボード」を
「つま先で踏み混むエフェクター」を
「繊細なフレーズ」を
「スタジオのあの一体感」を
「次へ進む為のブレイク」を
「青春の轟音」を
「癖になる変拍子」を
「グッと来るフィルイン」を
「漣のようなマーチ」を
「振り返ったときの笑顔」を
「奇跡の様なグルーヴ」を
みんな、見せてくれよ。
それぞれのライブで。
仲間の、先輩の、後輩の、背中を見たい。
そして自分も、背中を見られている事を意識して、頑張りたい。
どこにいてもみんながどこかで、頑張っている。
いい音を鳴らしている。
その事を思うと、僕は頑張れる気がします。
だってドラムがリズム乱しちゃ、ダメだからね。
メソメソする時は終わります。
ライブはもう今まさに始まる。
スポットライトがあたった。
カンカン!
さあ、みんな準備はいいかな?
ギター君。
ボーカルさん。
ベースの相棒!
いつものフォーカウントでいいかな?
みんな、いつもどうりにいこう。
「ライブ」は慣れっこだ。
さあ、行こう!
何も恐くない。
…!