大切なもの

大切なものほど忘れがちだ
白状すると、忘れていた部分がある。
忘れていたような、見ないようにしていた節が…ある。
それは
帰れる場所
帰れる事を許してくれる場所
帰る事を遠慮できる場所
帰る事を一瞬躊躇する場所
躊躇するけど、やっぱり帰ってみると良い場所
良いけど、ずっと依存するのは申し訳ない場所
依存とも、絆とも、情とも、妥協とも真実とも 断定しにくい場所。
不愉快な現実の単なる逃避ではなく、単なる強がりや高慢をひけらかす場所では無く、そのどちらにも断定できない、…しにくい場所。
それはやはり、貴重だ。
天狗になるのは、汚い(相対性の世界では対して事なんて何もない)。
悲観逃避の仲間に没入するのは下らない(なんの変化も無い)。
中庸とも、極論とも違う、そのままに人が人として生きる上での「大切」があると、思うのだ。
あくまで僕個人として。

奇人伝 1


最近、外回りをしていると、奇人を沢山見かけることが多くなりました。
日々発見する「貴人」を忘却の彼方に葬り去るのはあまりにも勿体無いとの事で、ことあるごとにここに報告していきます。
よろしく。
■倒立男
出没地点;オフィスビルとビルとの間に出没
装備;Tシャツに短パン。ともにボロボロ
時間;昼過ぎ
行動;
昼下がり、お昼を急ぐオフィスワーカーがひしめく雑踏にて。
倒立男は突如、壁を利用した倒立。
そのまま腕たて。
腕力が足りないのか、二回目から頭を打ち着けて腕たて。
一人パイルドライバー。
私の行動;非常に気にはなったが、三回目まで見て、歩き去る。
■胸筋男
場所;朝の東海道線
装備;Yシャツ
時間;ラッシュ時の電車
行動;
私のとなりの席に座っているサラリーマン
突如、胸筋をビクビク動かす
ある一定の法則があるようだが、その法則はとうとう東京駅につくまでわからなかった。
私の行動;寝過ごした
■お芋おじさん
場所;電車内
装備;作業服のようなもの
時間;お昼過ぎの電車内
行動;
かなり空いている社内。
ベンチ型の椅子に座る乗客。
突如やってきたお芋は、ウィスキーの小瓶を床に置くと、電車内で匍匐前進。
第一匍匐。
靴をぬいで、くつろぐ。
ウィスキーを一杯やる。
その後、突如「お芋さん転がり」をする。
社内ドン引き。だが、だれも文句を言わない。
果てしなく転がっていき、見えなくなる。
私の行動;ウォークマンを消して、注視する。

死ぬほど

死ぬほど
死ぬほど働いて、小さな間取りを借りる
借り、生活する為に働く
電車に乗ると
色々な生活が見える
それはまるで蟻の観察キットのようなマンションが見える
僕らはそれを観察する
類推する
人生の重みを
覚悟を
だがそれを神の目線からみたとき
蟻も
人も
猫も
全ては平等に
全ては平等に
空間だ
空間を
維持するために僕らは血眼になってはたらく
楽しもうが
苦痛だろうが
全て神からみれば平等だ
マンションの群れ
巣の群れ
群集
それぞれのドラマ
それぞれの平等
平等とゆう名の暴力。

遠景

風邪をひきました。
まあ、大した事はないのですが、今日は病院に行きました。

病院に向かう途中にある大学から漏れ聴こえて来る音。

聴くもたどたどしい、ジミヘンのパープルヘイズ。
多分スタジオのドアが開いているのだろう。
そしておそらく初心者だ。
下手糞なフレーズ。
だけど、嬉しそうで、だるそうな、音。

ウチの大学もあんな感じだったなあ。
今もあんな感じなのかなあ。
階段にもたれかかりタバコをふかす、カーディガンの青年が二階の踊り場からちらりとこちらを一瞥した。

羨ましいと思った。
僕は明日の仕事の為、病院へと急いだ。

慣れた紫煙をふかしながら。

皮肉と嘲笑

報告しわすれていたけど、私、五月に本配属になりました。
一年間は少なくとも、その部署にて働かせていただく事になりました。
日々、営業同行と、事務作業。イベント運営手伝い。名刺渡し。日報書き。職場の中での親睦。顔色伺い。経費でお茶のみ。喫煙。などが主な業務です。
しかし、実は事もあろうにその部署は、弊社で最も厳しいとされる部署です。

過去に新人が三人ノイローゼで、二名が殴られて、沈没していったそうです。

さて、私はどこまで耐えれるかなw
皆様ご存知のように、辛ければ辛いほど笑顔でいたいという、朗らかで明るい性格な私。
厳しい側面でも、みんなを和ませようと気を遣える私。
が、しかしとうとう先週言われました。

「あまりヘラヘラすんなよ」

いつか言われると思ってましたけどねw
いつもヘラヘラしてますからね、自分。
なんていうか、緊張感ないと思われるんでしょうね。
いや本当に緊張感ないんですよ。
大抵の社会のものは滑稽に見ててしまう悪い癖。

いつか殴られて辞めそう。

夕立

他人の老いた顔は容易に想像出来るのに、何故自分の老いた顔だけはいくら鏡を見ても想像出来ないのだろうかとふと、思った。

境界線

最近

弱い自分と、強い自分。
まだその境目がわからない。

会社人間になる境目と、自由で無責任の塊の自分。
その境目もわからない。
僕のまわりの人たちそれぞれに別々な僕の評価をされ、それが組み合わさって僕の評価になる。
それと同時進行で僕の内部で僕の評価も醸成されていく。

それはつまり
僕は
バラバラな環境で、ブツ切りにされ
バラバラな組織で、ブツ切りにされ
バラバラな個人に、ブツ切りにされる

答えられない期待に答える為に、
深い部分にいる超自我が、ブツ切りになった自分をひとつひとつ繋ぎ合わせて

「まあこんなところでいいでしょう」

という許可で完結する建設のような行為。

徐々に積み上げて行く俺の構成要素は、知らず知らずのうちに僕の中の大切な部分を蝕んでゆくかもしれない。
そのときに、だれかが一言
「あんたそれはおかしいよ」
と遠慮なくいってほしいんだ。
甘えでも妥協でもなく、僕の人間性の欠落はタブン僕自身で気づくことが出来ない。
変わって行く自分が怖いんだ。
居心地は悪いんだ。
「人が成長するときって苦痛を伴う」⇒「全ての苦労は人生の為になる」
=現状を肯定せよ

ってだれかが言ってたけど、
その苦痛が成長に繋がっているのか、
人格を槌で破壊しているのか僕にはまだ判別しかねるんだ。

逆に皆が困ったとき、方向を間違えそうになったとき、手を差し伸べてあげたいと思っているんだ。
変わって行くだろう、自分が怖い。
こんなあまりにも、あまりにもありきたりのモラトリアムなんて犬も食わないだろうけど。

それは
タバコが無くなったら、買いに行くように、僕という人格も、人材がなくなったから買われただけの話。

自動販売機から落ちてきたタバコが
考えている幾つかの戯言。

海と毒薬

海の側に住んでいると、実際中々海には行かないものだ。
もう潮風は生活の一部であるし、有難味も感じない。
散歩コースでもない限り、わざわざ見に行かない。
でも、無性に海を欲する時がある。
心がささくれ立った時。
どこか爛れた様な時。
そんな時は自然と足が海へと向かう。

欠けた心が海を欲するのか。
心が欠けたからこそ、元々ずっと心にあった海が呼ぶのか。
心が海を呼ぶのか。
海が心にあるのか。
潮騒に心を委ね、広大な視野に開放される。

広大な、あまりにも広大な海。
そら。
僕が今死んでも、未来、死んでも変わることの無い自然。
有機の繋がり。

漣に身を任す。
ひとつの贅沢で、また残酷な癒しだ。


少年が、一心に海に石を投げていた。
僕はそれを美しい光景に感じた。

満たされた気がして、見た事も無い夢見た。

『日が射した気がして、「見た事も無い未明」見てるのさ。』
…はいはい。さあ、もうそろそろカウントをとりたいと思います。

バンドを始めて、六年余り、僕は一体何回のカウントをとっただろうか。
思えば、殆ど全ての曲の始まりはカウントからだった。
そういえば、僕のカウントが印象的だったと言ってくれた人もいたね。

人生はライブだ。
ライブが人生とするならば、今まではまだ、個人練。
そしてその後に仲間とスタジオに入った所だ。
さしずめ、深夜パックって所かな。
ずっと夜通しダンスしてたもんな。
僕らはスタジオで、全力で音を鳴らしていた。
汗をかいて、笑って。
楽器を持つ人も、持たなかった人も。
それぞれの音をもっていた。
必死で練習した。

大人になる事から逃げる為に始めた筈の音楽に、何時の間にか僕らは育てられて大人になっていたんだ。

練習は済んだ。

僕らは今から、それぞれのステージに立つ。
ライブハウスは違うけど、みんな同じ日にライブをしているんだ。
エフェクターを繋ぎ、ジャックをアンプに差し込み、チューニングを終えた。
マイクのスイッチを入れた。
ドラムのセッティングを終えた。
最高の仲間とステージに立った。
学生生活の想い出という、最高のSEが流れた。

僕らは今、ステージに立った。
何処にいても、何をしていても、どんなに離れていても、時間が経っても、
「あいつ相変わらず、あんな所であんな音鳴らしてるよ。」
と、笑って、けなして、誇りたい。

「アイツまだリズム跳ねてやがるぜ」
「相変わらずフックの効いたベースを弾くねえ。」
「うわ、あいつまた変態的なギターソロ弾いてる!」
てな具合にね。
それぞれの人生の音を聴きたい。
「掻き鳴らすコード」を
「粋なゴーストノート」を
「直線的なビート」を
「胸に響く美しいリフ」を

「心躍るカッティング」を
「目の醒めるようなリムショット」を
「感傷的な歌」を

「攻撃的な歌詞」を
「斜に構えた立ち位置」を
「染み入るようなメロディー」を
「浮遊するディレイ」を

「疾走する感覚」を

「腰に来るようセットされたキーボード」を

「つま先で踏み混むエフェクター」を
「繊細なフレーズ」を
「スタジオのあの一体感」を
「次へ進む為のブレイク」を
「青春の轟音」を

「癖になる変拍子」を
「グッと来るフィルイン」を

「漣のようなマーチ」を
「振り返ったときの笑顔」を

「奇跡の様なグルーヴ」を
みんな、見せてくれよ。
それぞれのライブで。

仲間の、先輩の、後輩の、背中を見たい。
そして自分も、背中を見られている事を意識して、頑張りたい。
どこにいてもみんながどこかで、頑張っている。
いい音を鳴らしている。
その事を思うと、僕は頑張れる気がします。
だってドラムがリズム乱しちゃ、ダメだからね。
メソメソする時は終わります。

ライブはもう今まさに始まる。

スポットライトがあたった。
カンカン!

さあ、みんな準備はいいかな?
ギター君。
ボーカルさん。
ベースの相棒!

いつものフォーカウントでいいかな?
みんな、いつもどうりにいこう。
「ライブ」は慣れっこだ。

さあ、行こう!

何も恐くない。

…!