「人間五十年。下天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり。一度生を受け滅せぬもののあるべきか。」 

好きな舞の一節。
卒論が進まないのでタバコ買いに行きがてら散歩していると、

「おお」

 桜のつぼみが、もうついている。
こんなに寒いのに、ちょこんといやがる。
けなげだぜ。
また今年も散るのに。
桜にとっても「夢幻の如くなり」なんだろう。
でも咲くしかないから咲く。
咲いて、実をつける。
そして来年も寒い内から、つぼみをつける。

敦盛は、悲しい唄なんかじゃなくて、もっとこう、生に対して攻める唄なんだと解釈した。
自分の住んでる団地も、数年後には壊されるらしい。
「豊かになるために壊す」という記事が今日の朝日新聞に載っていた。
人口減少に伴って集団住宅を取り壊し「量」より「質」の住宅を提供していこうとする国策らしい。
郷愁と、恋慕に満ちた僕の古里も、数年後に消滅する。
郷土がまとめて全て消滅するなんて、そんな経験めったに無いでしょ?
ダムに沈むムラと殆どいっしょだよw「質」はないけどねw
虫とか、塔とか、立ちションベンとか、駄菓子とか、土とかそういったものに、将来僕はもう帰ることはできない。

次世代や、高齢者の方が、豊かになるために、古い住宅は壊す。

その選択も
この詩も
桜も

全部、夢幻の如くなり。

それだけに一個の人生は、逆説的に美しい。

こんな感覚を持てる日本人に生まれて良かった。

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