しん

しんとした病室に、母と二人。
力がなくなってきているのか、胸水のためなのか、時折、呼吸がとまり、このまま止まってしまうのではないかと思い、堪らなく胸が痛い。
無力感で、唐突な事で、あまりの事実の大きさに、考えがまるでまとまらない。
幾千、幾万の料理を作ってくれ、僕を抱き締めてくれ、叱ってくれ、教えてくれた、母の手はもう動かない。
温もりだけは、昔のまま。
その温もりさえも、間もなく失われ、二度と触れることも出来ないと思うと、寂しさが込み上げてくる。
だから、今はこの、
闇に落ちていく時間。
夜の底で二人。
手の温もりを忘れないぞと、胸痛みと共に胸に刻む。

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