命日

三年前の冬、親戚に買ってもらったお気に入りのPaul Smith、ポールスミスの時計を無くした。
今まで、何度なくなったと思っても見つかった時計だ。
僕はどんな時でも外せば無意識にカバンの中に入れていたから。

先月の28日、久々のバンド練習があった(横浜ゲートウェイの5番スタジオです。偶然ココを見て、見つけた方返してくれたら幸いです)。

汗をかくと金属がどうしても違和感を起こさせるから、僕はスタジオでドラムを叩くときはいつも時計を外す癖がある。
いつもそれでスタジオを出たあとなくしたと思って冷やりとするものだが、それでもいつもは奴はカバンの中からひょっこりでてきた。
いつもいつもでてきた。

何を勘違いしたのか、それが当然の縁だと思っていたんだ。

アイツはいつもでてくるんだ。

けど、今回は違った。

でてこなかった。

概して「当然の縁」は何時の間にかあっけなく終わりを告げるものだ。

大事なものって何時も、無くした時のその喪失感で大切さを気付くよね。
今回もそう。
喪失感が凄い。
「胸にぽっかりと大きな穴が空いちまった(とら)」。

思ってみればあの時計は僕の大学生活の大半を僕と一緒に過ごしてきた時計だった。
あの時計に意思があるとするならば、僕の大学生活の一番の証人だ(メガネは三代目だからね)。

勉強していたときも。
雨に降られたときも。
宮古島の熱気に晒された時も。
筋トレしてたときも。
就職活動していた時も。
練習していた時も。
バイトしていた時も。

全ての飲み会で。
全ての旅で。
全てのライブで。
あの時計はひんやりとして僕の腕にあった。
ただ黙って僕の青春の時間を刻々と刻んでいた。
時間を。
時間を見てくれていた。
僕と共にいた。
ああ。
僕は馬鹿だ。
もっと大切にしていればよかった。
大切にしていればこんな思いはしなくて済んだのに。
こんな喪失感を味わう事はなかったのに。
大きな大きな瑕疵。
僕の大学生活に於ける思い出の証人は、いなくなった。
当事者である、僕だけになった

証人が当事者しかいなくなり
大学生活は終わる。

僕の後悔の念をもって時計を追悼したい。

本当に、本当に大切だった!

彼の失踪を無駄にしないために論理を飛躍しよう。
いつかは森羅万象、全てが消えてなくなる。
僕の大切なもの全て。

いつかその日がくるまで、僕はこの消え入りそうな少ない時間を、関係を貪欲に、味わい尽くしたい。
せめてその前に自分が死にたいと思うのは我儘だろうか。
我儘だ。

人である以上、喪失と戦わなければならない。

大切な物や人に喪失感を味あわせない為に、喪失感と。
僕達は自らの意識が無くなるその日まで、周りの愛すべきものの崩壊を見届けなければならない。
その業を僕らは背負っている。

僕らはそう、世界の全てと失う為に出会ったのだ。
ただ、出会った事もまた、事実だ。

いや、出会ったことだけが唯一の紛う事なき希望だ。

3件のコメント

  1. 命日って、時計の命日ね。
    もしかしたら案外ひょっこりでてくるかも。
    そしてらまた、ぞんざいな扱いをその時計は受けるのかなぁ?
    どうでしょどうでしょ

  2. iwkn>
    てか!
    お前にはお見舞いもうしあげるよ。
    でもありがとう(;´Д`)
    みつかったよ(*゚ノ 3゚)
    ななしさん>
    絶対大切にします。
    なくしません。
    事実シンカン合宿で財布を無くしたあと自分財布は異常に気をつけてますw
    男って単純ですよ。

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