赤ん坊
昼下がり。
電車の中。
僕はバイトに向かう。
やわらかな日差しに包まれたボックス席の向かいに赤ん坊とその両親が座ってる。
彼女はちっちゃいちっちゃいその足をむずむずと動かしている。
むくむくとした頬が、とりおり笑顔をつくる。
その純粋な瞳は、しっかりと母を見据えている。
僕はボブマーリィの『woman no cry』を聴いて、それを見ている。
どうか彼女が、これからの未来、悲観の涙にくれませんように。
どうかこの世界のけがれが、彼女に興味を示しませんように。
どうか彼女が、健やかに健やかに、育ちますように。
小刻みに心地よく揺れる電車の中、大切に母の腕の中に抱かれ、懸命にミルクを飲む彼女とその母の姿に、神々しいものを見た気がした。
そんな、昼下がり。