力ない母を、ほっそりしてしまった母を、そっと抱き締める。
少し安心したようで、呼吸が緩やかになる。
痩せて骨ばってしまった母の身体。
だから余計に直に響く心臓のリズム。
喋らなくなってしまった。
お風呂沸いたよと、言う事もなくなってしまった。
指を握ってくれなくなってしまった。
寝ている僕に毛布をかけてくれる事もなくなってしまった。
帰宅時間を尋ねるメールをくれる事もなくなってしまった。
ワイシャツのボタンをとめてくれることもなくなってしまった。
でも、
その温もりと心臓の鼓動はからは、紛れもない愛を感じる。
途方もない愛。
抱き締めた母の胸から、直接、暖かい安らぎを感じる。
僕はいつも、捻くれたように振る舞い、厭世的な事ばかり言い、ネガティブな事ばかりいっていた。
自分を卑下する事に慣れていた。
だが、これからはそれも改めなくては。
僕には母からもらった物がある。
一番大きなプレゼント。
誇らしい、誇らしい、プレゼント。
それは、間違いなく僕の中にある。
暖かく、わかる。
辛いけど、
その贈り物に恥ずかしくない人生を送るよ。
絶対に。

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